新型コロナワクチン接種と子どもの権利に関する見解および提案

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2021年12月10日

新型コロナワクチン接種と子どもの権利に関する見解および提案

Think Vaccine管理者
家田堯

 以下の文面は、2021年9月25日にThink Vaccine(任意団体、ウェブサイトThink Vaccine(thinkvaccine.info)を運営)が開催したシンポジウム「若い世代のワクチン接種 多角的に考える接種の意義とリスク・ベネフィット」の内容及び文書下部に記載した各種資料に基づき、国内外の医療関係者、法律家、教育家、ワクチン学者の助言を得て、Think Vaccineが作成しました。

背景および本文書の趣旨

 わが国でも18歳以下への新型コロナワクチン(現在わが国で用いられている、メッセンジャーRNAやウイルスベクターの技術に基づく遺伝子ワクチン)の接種が進み、一部の国よりも急速に接種率が伸びています。ワクチンの恩恵がある一方で、接種をめぐる問題も生じています。一例として、子どもが受けられる教育の内容が接種の有無により区別される、許容される生活の条件が接種の有無により区別される、接種・非接種に関する自己決定権が尊重されない、といった問題が生じています。このような状況に鑑み、SARS-CoV-2(以下、「新型コロナウイルス」)およびワクチンに関する科学的、医学的、法律的観点からの考察が有用であるとの認識に基づき、以下では、主に18歳以下の年齢層に関し、ウイルスおよびワクチンについて得られた最新の知見を基にThink Vaccineの考えを述べます。さらに、この年齢層に対しワクチン接種に関連する事柄が適切に検討されることを願って、以下の提案をいたします。

新型コロナウイルスの脅威、および新型コロナワクチンの効果について

 病原体、とりわけ初めて接するウイルスに対し免疫が適切に反応し難い年齢層および個人にとって、新型コロナウイルスが、重症や死に至るおそれのあるウイルスであることは周知です。この年齢層および個人にとって、発症や重症化を予防する効果が得られている新型コロナワクチンを、接種によるリスク・ベネフィットの包括的な理解の上で接種することには、意義があると考えます。

 一方、前者とは免疫反応が異なる健康な子どもにとっての、ウイルスによる脅威およびワクチン接種の意義は、前者と区別して検討する必要があります。わが国では、これまで10歳未満の子どもで新型コロナウイルス感染により死亡した例は報告されていません。感染との関連において死亡した10歳代の3例のうち2例は、慢性呼吸器病などの基礎疾患のあった症例であり、残りの1例の直接の死因は交通事故です。新型コロナウイルスと比較して、季節性インフルエンザやRSウイルスの方が、わが国の子どもにとっては脅威です。毎年、季節性インフルエンザによる脳炎や脳症に、100~150人の子どもが罹患し、30%は死亡、30%は脳性マヒなどの重篤な後遺症に苦しんでいます。また、乳幼児を中心に年間7000~8000人がRSウイルスによる細気管支炎を発症し、20~30人が死亡しています。新型コロナウイルスが今後どのような変異を遂げるかは懸念事項であり油断はできないものの、世界を恐怖に巻き込んだデルタ株でさえ、18歳以下の年齢層に対するリスクが、インフルエンザウイルスやRSウイルスよりも低い点については、留意しておく必要があります。

 また、海外からの医学情報は有益ですが、こと、新型コロナウイルスの感染像には、国や人種等の間で差があることに注意を払う必要があります。新型コロナウイルス感染による子どもの死亡率(2021年9月30日現在)は、米国で約17万人に1人、英国においては約50万人に1人であり、約700万人に1人(交通事故による死亡例を含まなければ約1000万人に1人)の日本よりもずっと高いことは、あまり知られていません。英国では、わが国よりもずっと高い死亡率でありながら、政府の諮問機関であるワクチン・予防接種合同委員会(JCVI)は、子どもに対する新型コロナウイルスのリスクを“extremely low”(「極めて低い」)と評価し、12〜15歳の健康な子どもには、新型コロナワクチンの接種を推奨していません。

新型コロナワクチン接種の社会的意義について

 わが国では、集団免疫の獲得、医療ひっ迫の軽減、周囲に感染させないといった社会的な要因を考慮して、子どもへの新型コロナワクチンの接種が推奨されることがあります。しかし、ワクチン接種率を高めて集団免疫を獲得することは、デルタ株のような感染力の強い変異株の出現により、ワクチン接種が進んだイスラエルやシンガポールといった国においてさえも、断念されつつあります。日本でも、新型コロナウイルス感染症対策分科会の9月3日付けの文書において、「我が国において全ての希望者がワクチン接種を終えたとしても、社会全体が守られるという意味での集団免疫の獲得は困難と考えられる」と明記されています。

 子どもへのワクチン接種により、重症化や学校における集団感染を減らして、医療ひっ迫の軽減を図ろうという考えがありますが、そもそも、子どもにおける新型コロナウイルス感染症のほとんどは、無症状か軽症で、現在の入院適応の基準に照らせば、入院治療を必要とする場合はごく稀です。日本小児科学会の分析では、感染は主として、大人の社会から家庭や学校、つまり大人の社会から子どもの社会へと広がっています。子どもの社会においてワクチンを接種して感染を予防しても、入院を必要とする患者が絶対的に多い大人の感染が減少して医療ひっ迫を軽減できる可能性は低いと思われます。

 さらに、最近の研究では、ブレイクスルー感染によるワクチン接種者からのウイルスの排出量は、ワクチンを接種していない感染者からのウイルスの排出量と変わらないことが示されています。また、排出量がピークに達した後、接種者の方が非接種者よりもウイルスを早くクリアできる(約5.5日vs約7.5日)というデータがある一方で、無症状のブレイクスルー感染者が自覚せず非接種者よりも多量のウイルスを拡散し感染源になっていることを示すデータもあります。実際問題として、ワクチンによる感染予防について、当初期待されていた効果と実状との間には開きがあります。ワクチンを接種することで周りを感染させないという根拠の成立が、難しくなっています。

 一部の学校では、ワクチン接種者はマスクを外してよく合宿や修学旅行等の行事に参加できるが、ワクチン非接種者はマスクを着用する必要があり行事に参加してはならない、といった条件を設けているようですが、このような条件を設ける科学的・医学的根拠はありません。感染予防の観点からは、ワクチン接種を受けていても受けていなくてもマスク着用を含む感染対策は必要です。また、激しい運動を行うといった、マスクを外さないと健康被害が生じ得る場合や、マスク着用により教育の質が著しく低下する場合等には、ワクチン接種・非接種を問わず、全ての子どもにマスクを外す権利があります。学校生活において、教育はもちろん、子どもにとって欠かせない人生経験を積む権利が、ワクチンの接種・非接種に左右されるべきではありません。

新型コロナワクチンの副反応について

 ワクチン接種後に見られる有害事象については、ワクチン接種との因果関係が認められているものがある一方、因果関係が現在評価中のものもあります。また、未知の副反応が存在する可能性を否定するには、より多くのエビデンスの構築が必要です。これらの点は、ウイルスによるリスクが極めて低い子どもへのワクチン接種を検討する上で重要な判断材料であると考えます。また、ワクチン接種による副反応は比較的短期で治まるとの観点から子どもへの接種が推奨されることもありますが、数日から数週間通学が困難になる等のリスクを子どもに負わせてよいかについて、推奨者は熟考すべきです。数日から数週間であっても、成長過程にある子どもにとって失われた時間は戻って来ません。

新型コロナワクチン接種に関する法的事項

 ワクチン接種の有無により子どもの受ける教育の内容が区別されたり教育を受けることが妨げられたりした場合、日本国憲法第14条が定める平等権や同第26条が定める教育を受ける権利が、侵害を受けます。被接種者本人の意に反して接種あるいは非接種が強要された場合、日本国憲法第13条が定める自己決定権が侵害を受けます。ワクチン接種の有無により子どもが区別・差別の対象となった場合、日本国憲法第14条が定める平等権が侵害を受けます。ワクチン接種の有無は公共の福祉とは無関係の事項であると認められるため、ワクチン接種の有無に基づき子どもの居住・移転の自由や職業選択の自由が奪われた場合、日本国憲法第22条に基づく自由が侵害を受けます。

 更には、国際連合が定める児童の権利に関する条約(日本は1994年に批准)に関し、以下の問題が生じ得ます。子ども(当該条約においては18歳未満の児童を指します)の意に反しワクチン接種・非接種が強要された場合、当該条約第12条および第16条に基づく権利が侵害を受けます。ワクチン接種の有無に基づき、許容される生活条件について子どもが不当な扱いを受けた場合、当該条約第27条に基づく権利が侵害を受けます。ワクチン接種の有無により子どもの受ける教育の内容が区別されたり教育を受けることが妨げられたりした場合、当該条約第28条および第29条に基づく権利が侵害を受けます。ワクチン接種の有無により子どもの遊戯、文化的生活、芸術に参加する権利が奪われた場合、当該条約第31条に基づく権利が侵害を受けます。ワクチン接種の有無により子どもの自由が奪われた場合、自由を奪う行為は不法あるいは恣意的な行為であると認められるため、当該条約第37条に基づく権利が侵害を受けます。

 以上で述べた事柄に基づき、以下の提案をいたします。

提案

1.最新の知見に基づけば、集団免疫の獲得、医療ひっ迫の軽減、周囲への感染の抑制といった社会的な理由から子どもに新型コロナワクチンの接種を行っても、目的とする効果を得られる可能性は低いと思われます。子どもについては、社会的な理由ではなく、重症化予防効果など、個人の利益を第一にワクチン接種の是非を検討するべきと考えます。また、ワクチンのリスク・ベネフィットについて考える際には、ウイルスにより子どもが重症化することが極めて稀である点や、未知の副反応が存在し得る点に留意するべきと考えます。接種するか否かは被接種者本人および保護者・養育者が決定する事柄であり、それ以外の人が被接種者等の意に反し接種・非接種を促進・強要することは、不適切です。

2.ワクチン接種の有無により子ども達を区別することや、受けられる教育の内容を区別することに科学的・医学的な根拠はありません。日本国憲法および児童の権利に関する条約の下、全ての子どもに平等に生活し教育を受ける権利があります。

3.健康な子どもに対する配慮と同様、重症化リスクを抱えた子どもに対する配慮が必要です。健康の強化(必要な栄養の摂取、身体状態の改善、ワクチン接種等)や環境の整備など、様々な観点から、重症化リスクのある子どもが守られる条件を整える必要があります。なお、経済活動の活性化を含む社会の正常化は重要課題ですが、高リスクの子どもの周囲において感染予防対策が低下した場合、子ども本人のリスクが高まる点には、十分留意するべきです。

4.ワクチンパスポートの活用についての議論がわが国でも行われていますが、最新の知見によれば、特に感染抑制に関するワクチンの効能が疑問視されており、ワクチンパスポートの実施については科学的、医学的、法的根拠に基づいた十分な議論が必須です。とりわけ、ウイルスによるリスクが極めて低い子どもの権利や自由を制限する点については、国民的な議論を多角的、包括的に行うことが不可欠です。

 新型コロナウイルスの影響下においても、ウイルスによるリスクの低い子ども達は、できるかぎり平時と変わらない生活を送るべきです。コロナ禍にみまわれた子ども達が今後も健康・健全であり続けるには、特に子どもの養育、教育、医療に携わる大人の適切な認識、および社会全体による配慮が必要です。健康・健全とは、権利と自由が尊重され、肉体的、精神的及び社会的に良好な状態であり、単に疾病や病弱が存在しないことではありません。

以上

参考資料一覧

埼玉県弁護士会、「ワクチンパスポート制度によるワクチン接種の事実上の強制及びワクチン非接種者に対する差別的取扱いに反対する会長声明」(https://www.saiben.or.jp/proclamation/001042.html)(インターネット検索日:2021年12月10日)

新型コロナウイルス感染症対策分科会(第7回)資料(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/taisakusuisin/bunkakai/dai7/vaccine_nichijou.pdf)(インターネット検索日:2021年12月10日)

日本小児科学会、ガイドライン・提言「新型コロナウイルス感染症の流行拡大から子どもの生活を守りましょう」(http://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=127)(インターネット検索日:2021年12月10日)

BROWN Catherine. M. et al., Outbreak of SARS-CoV-2 Infections, Including COVID-19 Vaccine Breakthrough Infections, Associated with Large Public Gatherings — Barnstable County, Massachusetts, July 2021; 2021 (https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/pdfs/mm7031e2-H.pdf)(インターネット検索日:2021年12月10日)

KAMPF Gunter, The epidemiological relevance of the COVID-19-vaccinated population is increasing; 2021 (https://www.thelancet.com/action/showPdf?pii=S2666-7762%2821%2900258-1)(インターネット検索日:2021年12月10日)

KISSLER Stephen M. et al., Viral Dynamics of SARS-CoV-2 Variants in Vaccinated and Unvaccinated Persons; 2021 (https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMc2102507?articleTools=true)(インターネット検索日:2021年12月10日)

SUBRAMANIAN S. V., KUMAR Akhil, Increases in COVID-19 are unrelated to levels of vaccination across 68 countries and 2947 counties in the United States; 2021 (https://link.springer.com/content/pdf/10.1007/s10654-021-00808-7.pdf)(インターネット検索日:2021年12月10日)

Think Vaccine主催:シンポジウム「若い世代のワクチン接種 多角的に考える接種の意義とリスク・ベネフィット」(https://www.youtube.com/watch?v=Z7fXH6cWBso)(インターネット検索日:2021年11月26日)

この文書についてご意見・ご質問のある方は、上記シンポジウム「若い世代のワクチン接種 多角的に考える接種の意義とリスク・ベネフィット」をご覧になった上でご連絡下さると幸いです。

ウイルスの今後の変異やワクチンに関するデータの蓄積により、講ずるべき対策にも調整が必要となるものの、ウイルスによる脅威、及び/又はワクチンに関する知見に重大な変化がない限り、この文書に記載の事項は有効であると考えます。